一般的なパソコンのデータの単位は「ファイル」ですが、マイツールは「ページ」単位で管理します。
マイツールの発売開始は1984年6月。当時はWindowsもインターネットも存在せず、コンピュータもようやく中小企業でも一台購入できるようになった時代でした。マイツールの価格も、車一台分ほどの高価なものでした。
当時、マイツールで作成したデータはフロッピーディスクに保存していました。フロッピーディスク1枚が、100ページの大学ノート1冊分に相当するイメージです。一般的なソフトウェア、ワープロソフトの「一太郎」や表計算ソフトの「マルチプラン」などは、「ファイル」という単位でデータを管理していました。
たとえば、マイツールで名簿を作成するとします。1ページには50人の情報を記録でき、500人分の名簿を作るには10ページが必要になります。これが一般的なソフトであれば、1つのファイルにまとめるのが普通です。この「ページ単位」の概念は、現在でもマイツールとエクセルの大きな違いの一つであり、エクセルユーザーがマイツールを使おうとすると、理解しにくいポイントの一つとなっています。
では、なぜマイツールは「ページ」単位を採用したのでしょうか?ここから先は、私の推測も含まれています。
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マイツールの開発背景
その理由は、マイツールの開発背景にあると思います。マイツールは、コピー機メーカーであるリコー社から販売されました。リコーがパソコン事業に参入したのは1983年。当時、すでに20数社が市場に参入しており、リコーは後発の立場でした。そんな中、リコーが直面した課題は「コンピュータ素人(複写機セールス)が素人(コンピュータが使えない人)に売るにはどうすればよいか」ということでした。
一般的なコンピュータでは、「プログラムを作る人」「使う人」「アウトプットを利用する人」がそれぞれ異なります。しかし、リコーの答えは「それらを一人で完結できるようにしよう」というものでした。マイツールは、仕事のプロや職人が、自らの手を使って扱う「仕事の道具」 として設計されたコンピュータなのです。
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一般的なコンピュータの常識が通用しないマイツール
そのため、マイツールには一般的なコンピュータの常識が、良い意味で通用しません。
たとえば、マイツールでは 全角でも半角でも、数字は「数字」として認識し、計算に利用できます。
これはエクセルでは絶対にありえない仕様です。マイツールは日本人向けに設計され、かつ 人間的な使いやすさ を重視しているのです。
そんな、日本人が仕事に使うために作られたマイツールは、2000年10月にフリーウェア化され、バージョンアップは終了しました。しかし、それから四半世紀が経過した2025年でも、現役で仕事に使われ続けています。さらに、今からマイツールを活用して業務改革を始めようとしている元気な社長もいます。
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マイツールは仕事の「道具」
マネジメントゲームの開発者・西順一郎先生は、「社長はマイツールしか使えない」と言い、小さな会社のOA化を推進しました。
マイツールは、宮本武蔵にとっての正宗の刀、ルパン三世にとってのワルサーP38のようなもの。
これがなければ、仕事ができない「道具」なのです。
こんな優れた道具を、使わない手はありませんね。
(マヒマヒ)
※参考
高宮きょうこさん『マイツールの育児録』
https://www.takamiya.com/lib/log/index.html
次回予告
マイツールは、プログラミングではなくコマンド入力だけで、ユーザーが自分でコンピュータを使えるように設計されました。
次回は、マイツール最大の特徴である 「コマンド」 。