マイツールは、日本の事務機メーカーが 「売る人もコンピュータ素人、買う人も素人」 というコンセプトのもと、日本人によって開発された、日本最後発のパソコンです。
そのため、マイツールは 「コンピュータらしさ」を極力排除して作られました。
キーボードは鉛筆と消しゴム、画面は紙、ファイルはページ。
コンピュータ用語を一切使わないというのは、意外に難しかった と聞いています。
マイツールは、「プログラムを作る人」「使う人」「アウトプットを利用する人」が同じであることを前提とし、「一人で完結できるようにしよう」 という思想のもと設計されました。
だからこそ、後発メーカーが生み出したマイツールは、単なる計算機ではなく 「仕事の道具」 なのです。
マイツールという「道具」
マイツールのコンセプトが決まると、開発は 「道具の原則」 を忠実に実行する形で進められました。
道具の原則とは、道具が本来持つべき特性や、道具を設計・使用する際に守るべき基本的な考え方です。
参考にしたのは 大工や整備士の道具 でした。
最初は R(Read)、W(Write)、C(Calculation) など1文字のコマンドだけで操作できるようにし、できるだけダイレクトに意思を伝えられるように、メニュー方式ではなくコマンド方式が採用されました。
マイツールの開発が進むにつれ、コマンドの数はどんどん増えていきました。
そんなとき、マイツールの生みの親である荒川博邦さんは、「道具の原則」を確かめるために、宮大工の棟梁・西岡常一さんのもとへ足を運びました。
西岡常一さんは 「技術は道具にあり」 という信念を持ち、道具の手入れと適切な使い方が、最高の仕事につながる と考えている方です。
荒川さんは、「コマンドの数は増えても良いが、シンプルであることを重視する」 というマイツールのコンセプトを再確認しました。
コマンドと会話するように使うマイツール
金曜日の夕方、マイツールを習得するために神保町に通う58歳の社長 もいます。
彼は使ったコマンドをノートに書きながら、マイツールを学んでいます。
エクセルと違い、メニューではなくコマンドで操作することに、まだ戸惑っているようです。
しかし、マイツールは コマンドで会話をしながら使う道具 です。
使い込むうちに、コマンドとの対話に慣れ、自然に使いこなせるようになるでしょう。
それでも、彼が毎週通い続けるのは、マイツールに何か可能性を感じているからに違いありません。
マイツールとAIの可能性
今、かろうじて話を聞くことができる 荒川博邦さん は、こんな言葉を残してくれました。
「マイツールはもともとAIと相性が良いはずです。
コマンドは自由に書き換えができ、それぞれが独立していますからね。」
わたしは、マイツールがAIにつながるとは思いもしませんでした。
またしても、マイツールから新たな気づきと発見をもらいました。
(マヒマヒ)
次回予告:
「マイツールの原則」
マイツールは単なるソフトウェアではなく、 「仕事の道具」 として設計されました。
その思想の背景には、 「道具の原則」 という考え方があります。
次回は、宮大工の棟梁・西岡常一さんの言葉を改めて振り返りながら、
「マイツールの原則とは何か?」 を探ります。
「道具は使い込むほど奥が深くなる」
「良い道具は、使い手の成長を助ける」
職人の道具のように、マイツールが今も生き続ける理由を考えてみます。
どうぞお楽しみに!