「マイツールの原則」
日本最後発のパソコン、マイツールは 「売る人も使う人もコンピュータ素人」 という前提のもと、極力コンピュータ用語を排除して作られました。
それは、専門家しか使うことができない高級な計算機ではなく、「仕事で使う身近な道具」として設計されました。料理人の包丁や大工さんのカンナのように、「簡単に誰でも使えて奥が深い」 ことを目指した設計思想が込められています。「簡単だけど、決してバカチョンではない」。この考え方こそが、マイツールの本質を表しています。開発者の荒川博邦さんは、宮大工の棟梁・西岡常一さんの「技術は道具にあり」 という信念をマイツールに活かそうとしました。
西岡常一さんの「道具の原則」
西岡常一さん(1908-1995)は、日本の伝統的な木造建築を担う宮大工の棟梁であり、法隆寺の昭和大修理をはじめ、多くの歴史的建造物の修復に携わった人物です。彼の道具に対する考え方は、まさに 「道具の原則」 の体現そのものでした。
道具は、使い込むほど手に馴染み、良い道具は使い手の意思を正確に反映できる。しかし、それを活かせるかどうかは、最終的に使い手次第。この考え方は、マイツールの開発思想にもそのまま受け継がれています。
「道具の原則」とは何か?
職人の道具には、共通する「原則」があります。それはマイツールにもそのまま当てはまります。道具は、必要な機能だけを持ち、余計な装飾や複雑な操作を避けることで、シンプルで直感的に使えるものになります。また、手に馴染むことで、使えば使うほど精度が増し、効率的な作業が可能になります。そして、道具は「使い手がやりたいことを、できるだけ正確に再現する」ものであり、適切な手入れをすれば何年も使い続けられます。さらに、優れた道具は使い手が成長できる設計になっており、初心者でも使えるが、熟練すればするほど高度な技術を発揮できるようになるのです。
マイツールのコマンドと「道具の原則」
マイツールのコマンド設計は、まさに「道具の原則」に基づいています。シンプルであり、1文字から操作できるコマンドは、余計な機能を排除し、最小限の入力で最大の仕事をこなせるように設計されています。また、使い込むほどに操作の効率が上がり、キーボードで直接入力することで、使い手の仕事のリズムにフィットするという特徴もあります。
職人が道具を使い分けるように、マイツールも用途に応じたコマンドを組み合わせることができます。メニュー選択ではなく、自分の意思でコマンドを入力することで、コンピュータと「会話する」ように操作できるのもマイツールならではの特徴です。
マイツールは、発売から半世紀が経った今でも実用性があり、新しく使い始める人がいるほど、長く愛用できる道具としての価値を持ち続けています。今からマイツールを使い始めようとする58歳の経営者も、コマンドを習得することで、業務の効率化を図ろうとしています。マイツールを使うと沸き起こるワクワク感がたまらないようです。
相棒
マイツールのコマンドを入力するとき、画面の左下に表示される 「仕事は=」 の欄に、使い手はコマンドを入力します。
「今日のあなたの仕事とは何か?」
「あなたは、今、何をしようとしているのか?」
まるで、道具がわたしに問いかけてくるようです。
大工がノミやカンナに語りかけながら仕事をするように、マイツールを使っていると、コンピュータとも対話しているような感覚になります。
「今日は、いい感じだ」
そんな日が、マイツールを使っていると確かにあるのです。
いつの間にか、マイツールは仕事を支えてくれる 「相棒」 になっている。マイツールでなければダメだ。そう思える瞬間があるのです。
マイツールは、人生とビジネスをより豊かにするための「わたしの道具」 なのです。
次回予告:「マイツールが言っているから」
マイツールを使っていると、気づくことがあります。
「なぜこれをやるのか?」と考えたとき、答えはシンプルに 「マイツールが言っているから」 となることがあるのです。
マイツールが示す数字、マイツールが出した結果、それに従うことで、仕事のやり方が変わる。次回は、「マイツールが言っているから」 という言葉の意味と、マイツールが仕事の進め方に与える影響について考えます。どうぞお楽しみに!
(マヒマヒ)