これまでに、マイツールの基本操作――起動・終了・表の作成・保存・読み込み・修正――をひと通り体験していただきました。うまくいかなかったところがあっても、それで構いません。むしろ、その経験こそが大切です。
今週のテーマは、「情報の加工」です。
あなたはすでに、マイツールのコマンドを20個近く使えるようになっています。「おはよう」「ありがとう」「またね」といった日常会話のように、マイツールとのやりとりも少しずつ自然になってきたのではないでしょうか。どうですか、マイツールと友だちになれそうですか?
では、ここからはもう一段、会話のレベルを上げていきましょう。
今週の演習では、名簿データを“加工”して、ただの一覧表から「使える情報」へと変えていきます。この週を終える頃には、マイツールの基本コマンド33語をひと通り使えるようになっているはずです。
今週の課題(6ステップ)
1.年齢を出す
2.平均年齢を出す
3.年長順に並べる
4.グラフ化する
5.そのグラフに年齢を書き込む
6.市内(都内)の人だけ打ち出す
1.年齢を出す
まず、先週作成した名簿(22ページ)を読み込みましょう。
R(リード)ドン、22ドン

次に、7列目に「年齢」カラムを追加します。
IC(インサートカラム)ドン
年齢を計算して、この欄に書き込みます。
「どうすれば年齢が出せるのか?」と疑問に思った方もいるかもしれません。
カギになるのは、誕生日のデータです。
たとえば、ある人の誕生日が1998年6月1日だったとしましょう。
あなたなら、どのように入力しますか?
19980601
1998-06-01
1998/6/1
1998.06.01
――いずれも不合格。正解は、ただひとつ。
1998.0601
この形式なら、コンピュータは「小数点のある数字」として読むし、人間が見れば「1998年6月1日」と読めます。
人間が見てわかること――これが、一番大事です。
そのために、コンピュータをごまかします。この「1998.0601」という表記は、そんなテクニックのひとつです。
鉄則
人間にとっては日付
コンピュータにとっては数字
このように、数字と見なせる表記にしておくことで、計算や並べ替えが格段にやりやすくなります。
マイツールには、エクセルのような「セルの属性(プロパティ)」のような概念がありません。
だからこそ、あとで加工しやすくするためには、小数点のある数字(小数点は1つ)で入力しておくことが大切なのです。
マイツールでは、誕生日は「1998.0601」のように、小数点付きの数字として入力するのがコツです。
人間が見ると「1998年6月1日」と理解できます。
コンピュータは「小数を含む数値」として処理します。
これにより、日付のまま数値計算ができるのです。
さて、年齢を計算するためには、小数点以下の処理方法として「切り捨て」を選ぶ必要があります。
まず、次のように設定しておきましょう。
DR(デシマル・ラウンド)ドン → 「切り捨て」ドン
では年齢を出してみましょう。
※本日が2025年4月13日とします。
そして年齢計算
「仕事は=」に
2025.0413 – C6 = C7
計算結果が7列めに書き込まれます。

計算が終わったら、DRドンを「四捨五入」ドンにもどしておきます。
2.平均年齢を出す
まず、合計年齢を出します。
合計年齢を出すには、マイツールでは簡単で「TL」(トータル)ドン一発です。
TL ドン
次に、平均年齢を出します。
平均年齢を出します。
平均を出すには、「AV」(アベレージ)ドンで出します。
「AV」ドン
「L6ーL(T-1)」ドン

★ワンポイント(覚えておくと便利)
L:行(ライン)
C:列(カラム)
H:先頭(ヘッド)
T:最後尾(テール)
L(T-1):最終行の1つ前
L(T-2):最終行の2つ前
この辺で必ず一度「W」ドンしておきましょう。
W ドン 23 ドン
3.年長順に並べる
いよいよ「S」(ソート)命令です。年齢順に並べ替えてみましょう。

マイツールで「S」ドン(ソート)すると、「合計行」は最上部に、「平均行」は真ん中あたりに並びます。
――ここからが、あなたの“分かれ道”です。
せっかく「S」ドン一発で、経営や意思決定に役立つ“最新型の情報の形”ができているのに、それをわざわざ元の順番に戻してしまう人が少なくありません。「合計行」や「平均行」を「ML」(ムーブ・ライン)で元の位置に戻すのは、“エクセル病”と言ってもいいかもしれません。
上から順にソロバンを入れて、最後に合計を書く――それは江戸時代のやり方と何ら変わりません。
今回は「年齢」のデータで例を挙げていますが、もしこれが「売上」だったらどうでしょうか。
社長はどの数字から見ると思いますか?
きっと、まずは合計です。次に気になるのは、どの商品が、どの事業部が、どの担当者が、どれくらい売っているか。つまり、どこが良くて、どこが課題かを見るはずです。
そのとき、「S」ドンで並べたデータの方が、圧倒的にわかりやすいはずです。
合計が一番上に表示されていれば、社長はまずその1行を見るだけで全体像を把握できます。さらに、平均が真ん中あたりにあることで、平均値を境に「良い・悪い」の判断が直感的にできます。
そこから先は、「では、どう手を打つか?」という行動につながるのです。
4.グラフ化する
ここまで来たら、次は表をグラフ化してみましょう。
グラフにすることで、数字が苦手な“右脳”の人でも、直感的に内容が理解できるようになります。
「情報とは、人が見てすぐに理解できるものでなければならない」――これは、情報整理における基本的な考え方です。
相手中心主義で考えれば、当然グラフ化してあげたほうがいいに決まっています。
「G」(グラフ)命令で14種類のグラフが作成できます。
マイツールでは、一番左の列を「見出し」にするので、「MC」(ムーブ・カラム)命令で、名前を1列めに移動しておきましょう。
まず、「名前」を1列目に移動します。
MC ドン
次にグラフ作成:
グラフの作成も簡単です。
まずは、G ドン(グラフのコマンド)と入力してください。
あとは、画面に表示される質問に順番に答えていくだけで、グラフが完成します。

画面が切り替わりますが、驚かないでください。
マイツールは「フロント(表)画面」と「バック(裏)画面」の2面構成です。
グラフは裏画面に作成されます。
グラフが表示されると、元の表が画面から消えてしまいますが、驚く必要はありません。
マイツールには「表(フロント・エリア)」と「裏(バック・エリア)」という2つの画面があり、それぞれに役割があります。
フロント・エリア:表形式のデータを処理する画面
バック・エリア:グラフの表示や一時的な保存に使われる画面
G ドンでグラフを作成すると、自動的にチャンネルが切り替わり、バック・エリアが表示されます。つまり、画面が切り替わっただけで、元の表はちゃんと残っています。
画面の裏表を切り替えるには、「X」(エクスチェンジ)ドンを使います。
このコマンドを実行すると、バック・エリアにあるグラフがフロント・エリア(主画面)に呼び出され、画面上に表示されます。
その状態で「W」ドンすれば、グラフの表形式データと同じように、ページに保存することができます。
5.グラフに年齢を書く
いろんなグラフを試してください。
データとデータのあいだに、どんな関係があるのか――
それを視覚的に把握するには「相関グラフ」が効果的です。
たとえば、棒グラフや折れ線グラフのように、ひとつのデータ(今回は年齢)をソートしてグラフ化するだけでは、情報を「一次元的」にしか見ていません。
ですが、「二次元相関図」で見ると、もう一段階視点が上がり、物事を二面的に捉えられるようになります。さらに、マイツールではそれを三次元グラフにまで高めることも可能です。
次元が上がると、見えなかったことが見えてくる。
それは、グラフでも情報でも同じです。
単に数字を並べ替えるだけでなく、「見方の次元」を上げることで、本質に近づくことができるのです。
マイツールは何のために使うのか――少し立ち止まって、考えてみましょう。
それは、問題を解決するための情報を得ること、
そして、目標を達成するための意思決定を支えることです。
そのためのステップは、驚くほどシンプルです。
マイツール活用の基本ステップ
1.合計を出す
2.平均を出す
3.並べ替える(ソート)
4.グラフ化する
5.TM(まだ登場していません)
6.東京都の人だけ打ち出す
さて、最後の課題です。
「名簿」の中から、「東京都」の人だけを抜き出してみましょう。
必要なデータだけを取り出すときに使うのが「SH」(サーチ)コマンドです。
このサーチには、いくつか方法があります。
1つ目:住所で探す
「東京都」と入力されている人だけを抽出する方法です。ただし、入力がバラバラだったり、「東京都」を省略している場合には、正確に探し出せません。
2つ目:電話番号で探す
「03-」という市外局番が「東京(都区内)」の目印になります。
たとえば、「C5=*03ー*」とすれば、03から始まる番号を持つ人を抽出できます。
3つ目:郵便番号で探す
東京都の郵便番号はおおむね「100番台」です。
そこで、郵便番号のカラムに「100」で始まるデータを「SH」コマンドで抽出する、という方法もあります。
どの方法で抽出するかは、自分で考えて試してみてください

失敗の繰り返しが成功への近道
「SH」コマンドで探し出したデータは、画面上に一時的に表示するだけでもいいですし、必要であればページに保存することもできます。
使い捨てで済むデータなら、また必要なときに「SH」ドンでやり直せば問題ありません。
どうしても残しておきたいときには、保存しておけばよいのです。
これで、第2週から続いてきた「名簿」の全課題を終えることができました。
ここまで真面目に取り組んできた方は、きっと多くの「失敗」を経験したことでしょう。
そしてその失敗を通じて、「どうすればうまくいくのか」を自然と学び取ってきたはずです。
初心者が陥りがちなのは、「すぐに人に聞いてしまう」ことです。
でも、それでは本当の意味で身につきません。
「自分で考え、自分で試す」――これこそが、マイツールを使いこなすための最短ルートです。
わたしは、「教えすぎてはいけない」のです。
最低限の知識と方向だけを示したら、あとは自分で手を動かし、自力で這い上がる経験をしてもらいたい。
このコラムでも、コマンドの詳しい解説はあえて省いています。
それは、あなた自身が必要なタイミングで、マニュアルやネット検索で調べて進めばよいと思っているからです。
簡単に手に入れた知識は、簡単に手元からこぼれていきます。
でも、自分の頭で考え、手を動かして苦労して得たものは、そう簡単にはなくなりません。
ここまでくれば、マイツールをマスターするための“レール”は、すでにあなたの中にできあがっています。
あとは、そのレールを自分の足で走るだけです。
失敗を恐れず、むしろどんどん失敗してください。
コンピュータは、間違っても壊れません。
エラー音を恐れないでください。
また言っていると思ってください。
コンピュータに対して「間違えてはいけない」と思い込まないでください。
人間のいいかげんさを認めるというのがマイツールの開発思想だからです。
何百回でも、何千回でも、あらゆる失敗を体験してみてください。
徹底的に失敗すれば、自然と“成功するしかない道”が見えてきます。
鉄則
エラー音を楽しもう
失敗は成功への近道
とにかく、W ドンを忘れずに!
上書きでデータを消さないように!
(マヒマヒ)